DX時代に相応しい経理の新しい働き方を共創する──「日本の経理をもっと自由に」プロジェクト発足

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令以降、多くの企業がテレワーク化への取り組みを本格化させる中で、経理・人事をはじめとするバックオフィス部門のテレワーク化の推進が困難を極めたことは記憶に新しい。その背景の一つとして、日本固有のアナログなハンコ・紙文化の存在を指摘する声がいくつか見られたが、いずれにせよ、我が国に蔓延る旧態依然とした商習慣の存在が働き方改革の推進を阻む大きな障壁となっていることは疑いようのない事実と言えるだろう。そんな中、上記の課題を解決すべく、オンライン決済の代行サービスを提供する株式会社ROBOT PAYMENT(以下、ROBOT PAYMENT)が発起人となり、経理の新しい働き方を共創するプロジェクト「日本の経理をもっと自由に」が発足された。本稿では、2020年7月2日に開催された発表会の概要をお伝えする。

開会挨拶

まず、本プロジェクトの発起人であるROBOT PAYMENT代表取締役・清久健也氏から開会挨拶が行われた。2000年にインターネット決済サービスの会社として設立された同社は、「お金をつなぐクラウドで世の中を笑顔に」というビジョンのもと、企業のお金周りの課題を解決するサービスを提供している。現在では、創業以来のノウハウを活用し、請求管理の自動化クラウドサービス「請求管理ロボ」を開発し、複雑化する請求・債権管理業務の効率化・改善を通じて、経理担当者の柔軟な働き方・生産性向上を支援している。

ROBOT PAYMENTが提供する「請求管理ロボ」は、経理業務の約8割が定型業務であることに着目し、請求管理に関するすべての業務の自動化を実現することを目指すSaaS型クラウドサービスである。サービスを提供する中で、経理部門における働き方に対して大きな課題意識を感じていた清久氏は、2020年10月1日の電子帳簿保存法の改正を控えたこのタイミングを逃せば、経理部門における抜本的な働き方改革を実現することはきわめて困難になるという自身の見解を明らかにした。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令以降、我々の働き方は大きく様変わりつつある。実際、国内大手企業においても、サントリーが2020年6月から「脱ハンコ」を宣言。日立も週2〜3日出社の在宅勤務を前提とするワークスタイルを開始することを決めた。このような形で日本企業の働き方が大きく変わりつつある中、紙の請求書の作成や押印・発送、受け取りのために出社を余儀なくされている経理担当者の働き方に関して大きな改善の余地があることはほとんど明らかである。

営業やマーケティング部門と比べると、経理などの間接部門のIT化については、どうしても優先度が低くなってしまう傾向はある。しかし他方で、定型作業が多い経理業務は本来的にはIT化に取り組みやすい領域でもある。「定型業務から経理担当者を開放することで、経理担当者が企業経営に直結したコア業務に注力できるような状態をつくりたい」と清久氏は語る。

ROBOT PAYMENTが実施したアンケート調査(n=1000)によれば、「請求書は電子化されるべきである」と考える経理担当者は全体の約9割(推定184万人)にのぼる一方で、全体の64.6%の経理担当者が「IT導入を勤務先に依頼しても自身の意向が通らなかった」と回答しており、現状の経理業務の効率性については数多くの課題が存在するものの、経理担当者の声がなかなか届かない状況にあることが見て取れる。

上記を踏まえ、2020年10月1日の改正電子帳簿保存法施行に向けて、「紙の請求書の電子化」をプロジェクト全体で推進していく構えだ。法改正に伴い、電子化に必要とされる要件が緩和されたことで、ペーパーレスな取り組みを推進しやすくなったものの、「請求書の電子化」は自社だけで達成できることではない。「日本企業全体でこの問題に取り組むべく、50社の賛同企業の方々とともに、日本全国の企業の請求書電子化を推進していく」と清久氏は述べた。

また、「経理プラス編集部」の調査結果によれば、日本国内の請求書電子化サービスの導入比率は約34.2%であり、本プロジェクトを通じて、約50%の企業が請求書電子化サービスを導入している状態を目指すことを宣言した。さらに、国別のクラウド導入状況を見ると、日本のIT支出に占めるクラウド支出の割合は2020年には4.4%となる見通しであり、米国と比べると、3倍以上の差が生まれている。クラウド後進国よりもさらにクラウド化が遅れている「抵抗国」と呼ばれている現在の状況に鑑みれば、現状の約34%という請求書電子化サービスの導入比率を約50%にまで引き上げるという数値目標は非常に大きな意味を持つものであり、「まずは、国内の半分へ到達することが第一歩だ」と清久氏は述べた。

具体的な4つのアクション

最後に、上記の目標を実現していく上で、今後取り組むべき4つの具体的なアクションが発表された。

01:最低100社の賛同企業募集
より信頼性が高く、規模の大きな取り組みにすべく、さらに50社の賛同企業を募集する

02:個人署名1万件を集め経済産業省へ提出
個人署名1万件を集め、企業のDX化を推進している経済産業省に提出することで、例えば、ガイドラインの策定など、請求書の電子化をより一層推進しやすい環境を整備するための働きかけを実施

03:経理の新しい働き方を世の中へ発信
新しい働き方に取り組む経理部の方々や有識者の方々、さらには賛同企業の方々のインタビューを実施

04:賛同企業に対し請求管理ロボの導入費用無償化
賛同企業を対象に、「請求管理ロボ」導入支援費用の無償化を実施

これらのアクションを通じて、約184万人もの経理の「声なき声」を代弁し、日本社会に対してより大きな働きかけを行っていくとのこと。

賛同企業からのメッセージ

次に、ROBOT PAYMENT執行役員兼フィナンシャルクラウド事業部長を務める藤田氏から今回のプロジェクトに賛同を表明した50社の企業が紹介された。

賛同企業抜粋(2020年7月2日時点)

これからの経理の働き方を考えるトークセッション

その後、TDMテレワーク実行委員会にて委員長を務める長沼史宏氏、株式会社キャスターにて代表取締役を務める中川祥太氏、ランサーズ株式会社にて取締役を務める曽根秀晶氏をゲストスピーカーに迎え、ROBOT PAYMENT執行役員 フィナンシャルクラウド事業部長・藤田氏を加えた4名で、これからの経理の働き方を考えるトークセッションが実施された。

トークセッションでは、「Covid-19流行禍における経理の働き方」「経理の働き方を変えるため日本において必要なアクション」「本プロジェクトで実現できる経理のあるべき姿」の3つのテーマについて議論が展開された。

創業当初からフルリモートで組織を運営してきたキャスター・中川氏は、「『世の中の非効率性を生み出している不要な紙・ハンコ文化を無くしていく必要がある」と述べ、「『オペレーションの観点から紙をなくすことができない』という意見のほとんどは言い訳に過ぎない」「法律もOKと言っているのだから、今こそ変えていきましょうよというシンプルな話だと思っている」と提言した。

ランサーズ・曽根氏は、本プロジェクトに賛同した立場として、「リモートワークを全社的に導入する際に、『スマート経営5原則』を宣言することによって、社内外に自社の働き方に関するガイドラインを発信したことが非常に効果的だった」と振り返った(参考リンク)。

さらに、働き方改革やDXの推進に関して、「手段の目的化に陥りがちな事例が増えている」と述べた上で、「既存の業務内容を合理化・標準化した上で、より付加価値の高い業務を追求していくべき」と指摘した。

働き方の多様性を重視する首都圏の企業の賛同により発足したTDMテレワークにて実行委員長を務める長沼氏は、「企業・個人問わず、テレワークには様々なメリットが存在する。今後も、官民一体となって、さらなる普及を目指していく必要がある」と語った。

ROBOT PAYMENT・藤田氏は、「そもそも、コロナ以前から経理には紙やハンコといった課題が存在していたが、率直に言って、本当に紙でなければならない業務はそれほど多くない」と指摘した。

その上で、「紙の請求書は不要だと考える184万人の経理の方々の声なき声が浸透しておらず、紙文化が残ったままになってしまっている」と語り、現状に対する危機感を表明した。

また、キャリア形成に関する悩みを抱えている経理担当者が非常に増えており、緊急事態宣言発令以降、経理担当者の2〜3割が転職を考えたという。「これらの状況を改善すべく、我々は一石を投じていきたい」という考えを藤田氏は明らかにした。

画像出典:日本の働き方をもっと自由に

執筆者:勝木健太
1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業企画/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。執筆協力として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』などがある。