公開日

2022/06/06

最終更新日

「令和の資産形成は“家計簿”から始まる」家計簿普及促進委員会:『家計簿の夕べ』(後援:金融庁/金融広報中央委員会)

2019年11月20日、日本橋兜町・茅場町の資産運用・FinTech企業向けオフィス「FinGATE KAYABA」にて、家計簿普及促進委員会(マネーフォワード/Zaim/マネーツリー/スマートアイデア/婦人之友社/ときわ総合サービス<順不同>)が主催するイベント「家計簿の夕べ」が開催された。家計簿を活用した資産形成について語ることを目的として開催された本イベント(後援:金融広報中央委員会/金融庁)。本稿では、その概要を講演レポートとしてお届けする。

撮影:多田圭佑

開会の挨拶(ときわ総合サービス株式会社 二宮 裕子氏)

まず、前半の部の冒頭で、家計簿普及促進委員会の共同代表を務めるときわ総合サービス株式会社 二宮 裕子氏から、開会の挨拶が行われた。

基調講演「将来に備えたライフプランと資産運用」(日本証券業協会 政策本部 広報部 安井 朋見氏)

続いて、日本証券業協会 政策本部 広報部 上席調査役 安井 朋見氏(以下、安井氏)から「将来に備えたライフプランと資産運用」と題して、基調講演が行われた。

パネルディスカッション「老後不安への対応としての家計簿」(家計簿普及促進委員会 構成企業メンバー6名)

次に、後半の部では、「老後不安への対応としての家計簿」と題して、パネルディスカッションが行われた。パネラーを務めたのは、家計簿普及促進委員会 構成企業メンバーの6名。

株式会社Zaim 綿島 琴美氏

スマートアイデア株式会社 江尻 尚平氏

ときわ総合サービス株式会社 鷹取 しん子氏

株式会社婦人之友社 濱川 香雅里氏

マネーツリー株式会社 鈴木 塁氏

株式会社マネーフォワード 瀧 俊雄氏

上記のメンバー6名が紹介された後、きんゆう女子。メンバーをモデレーターとして迎え、Q&A形式によるパネルディスカッションが開始された。

Q1:どうすれば家計簿管理を続けられるのか

まず、1つ目のテーマ「どうすれば家計簿管理を続けられるのか」について議論が行われた。

Zaim 綿島氏は、「一気に全部を記録する必要はない」「まずは、クレジットカードを家計簿アプリに連携するだけでも十分」と述べた。また、家計簿アプリ「Zaim」の利用者の中には、カテゴリを工夫し、ダイエットの妨げになるような出費を「ブタ費」と命名し、それが増えすぎないように体重管理を行っている方もいるとのこと。同氏からは、上記のようなユニークな家計簿の活用方法が共有された。

ときわ総合サービス 鷹取氏は、綿島氏の意見に同意を示した上で、「細かいことは気にせずに、まずは“続ける”ことを重視すべき」「いきなり正確性を求め過ぎないことが重要」との見解を明らかにした。

Q2:家計簿を活用した家計の見直しのポイント

次に、2つ目のテーマ「家計簿を活用した家計の見直しのポイント」について議論が行われた。

スマートアイデア 江尻氏は、「月次で収支がプラスなのか/資産が増えているのかを把握することが重要」「収支がプラスになっていない場合、どのようにしてプラスにするかを考えることから始めるのが良い」と述べた。また、同氏は、スマートアイデアが提供するサービス「おカネレコ」のユーザーの中で、「反省文を書き込みながら、毎日の出費を家計簿に記録する」ことで、毎月7万円の貯金に成功した30代女性の事例を紹介し、家計を“見える可”することの重要性について力説した。

Q3:家計簿を活用した老後不安への対応

3つ目のテーマ「家計簿を活用した老後不安への対応」について議論が行われた。

ときわ総合サービス 鷹取氏は、「家計簿をつけることで日々の生活を送る上でどれくらいの資金が必要かについて把握することができる」「家計簿をつけることが漠然とした将来に対する不安への対処につながる」と述べた。また、老後に必要とされる資金のシミュレーションを行う上では、金融広報中央委員会が提供する情報サイト「知るぽると」のコンテンツが役立つことに言及した。

婦人之友社 濱川氏は、「自分のお金の使い道が把握できると、将来のライフプランの道筋も見えてくる」「まずは記帳することで、現在の自分の状況を理解することから始めるのが良い」と述べた。また、「現在の家計を把握せずに、老後のことを考えても、漠然とした不安は根本的には解決しない」「家計簿をつけることが、生涯にわたって、お金を有効活用するための“土台”になる」と指摘した。

Q4:家計簿のおすすめの付け方

4つ目のテーマ「家計簿のおすすめの付け方」について議論が行われた。

スマートアイデア 江尻氏は、「その時々の状況次第だが」と前置きしつつ、「できる限り毎日記録することをおすすめしている」と述べた。また、「家計簿をつけることが習慣化するまでは、自分なりのタイミングで気負わずに取り組むとよい」と語った。

Q5:家計簿の履歴をどれくらい残すべきか

5つ目のテーマ「家計簿の履歴をどれくらい残すべきか」について議論が行われた。

婦人之友社 濱川氏は、「家計簿の履歴をどれくらい残すべきかは人それぞれ」と述べた上で、婦人之友社が提供している家計簿の利用者の中には、親子二代にわたって、90年間に及ぶ家計簿の履歴を残しているユーザーも存在することを明らかにした。

Q6:紙/アプリの家計簿のメリット

6つ目のテーマ「紙/アプリの家計簿のメリット」について議論が行われた。

Zaim 綿島氏は、紙の家計簿のメリットとして、「“ゲーム感覚”で空白を埋めることができ、ある種の“達成感”を味わうことができる」ことを挙げた。一方で、アプリの家計簿のメリットとして、「型にハマらずに続けていくことができる」「メモだけでなく、写真も記録することができ、ライフログ的に利用できる」「キャッシュレス決済の残高も把握しやすい」ことを挙げた。

また、婦人之友社 濱川氏は、綿島氏の発言を踏まえた上で、「何十年と家計簿を記帳し続けた蓄積によって、一生の家計のグラフが出来上がる。その結果、教育費/住宅ローンなど、年代ごとの収入と支出の“山”を知ることができ、それは家族の大事な歴史となる」「家計簿をつけると、今、何を大事にしたらよいかが見えてくる。家庭経済の基礎をつくるとき、教育費や住居費の山を越えるとき、定年後の年金生活など、大きな変化に向けて、生活の方針を決めなければならないこともわかるようになる。人生で思いがけないことが起こっても、家計を把握していれば、乗り越える工夫も生まれてくる」と語った。

Q7:起業/副業の際の家計簿の付け方

7つ目のテーマ「起業/副業の際の家計簿の付け方」について議論が行われた。

マネーツリー 鈴木氏は、「副業で得た収入については、別口座にする等の対応も考えられる」「さらに、家計簿アプリを利用して、本業と副業を区分して、家計管理することができる」と述べた。

マネーフォワード 瀧氏は、「副業の収入が継続的なものであれば、本業とは別に管理することも選択肢の一つ」と述べた。また、「起業した場合、2年ほどは家計がどうしても赤字になりがち」「事業と家計を分けて考えて、自身の生活を守ることも重要」との見解を明らかにした。また、転職/起業した際の注意点として、「前職時の年収によっては、前年分の税金が多額になることがあり、その点については、留意する必要がある」と指摘した。

Q8:アプリの家計簿のセキュリティ対策

8つ目のテーマ「アプリの家計簿のセキュリティ対策」について議論が行われた。

マネーツリー 鈴木氏は、「個人情報保護/セキュリティ対策については、創業当時からプロダクト開発の最優先事項として取り組んでいる」「アプリと銀行口座を連携する際に、通信情報を暗号化することで、安心・安全を維持できるような対策を取っている。これによって、Moneytreeのウェブサービス、Androidアプリ、iPhoneアプリのすべてにおいて、毎年、TRUSTeによるプライバシー認証を取得・更新している」と説明した。

参考:Moneytreeの安全性

マネーフォワード 瀧氏は、上記の鈴木氏の発言を踏まえ、「個人情報保護/セキュリティ対策を第一にシステムを構築・運用している」「セキュリティの安全性を担保するために、自社内の高度な管理体制の構築に加えて、外部セキュリティ診断会社からの第三者評価を実施の上、サービスを提供している」と説明した。

参考:マネーフォワード MEでのセキュリティの取り組みについて

閉会の挨拶(金融庁 佐藤 雅之氏/金融広報中央委員会 小泉 達哉氏)

最後に、金融庁総合政策局総合政策課総合政策管理官の佐藤 雅之氏(以下、佐藤氏)/金融広報中央委員会事務局次長兼日本銀行情報サービス局参事役の小泉 達哉氏(以下、小泉氏)から本日のイベントの感想が述べられた。

佐藤氏は、家計簿を活用し、家計の“見える可”を図ることは、我が国の金融リテラシーのさらなる向上につながると述べた。

小泉氏は、2019年11月18日に発表した「家計の金融行動に関する世論調査」を踏まえた上で、資産形成の観点からも、家計簿の存在はますます重要になると言及した。

執筆者:勝木健太

1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。執筆協力として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』などがある。