公開日

2022/06/07

最終更新日

「大企業からスタートアップに転職して活躍する“人物像”について考える」New Career #2(主催:株式会社ペイミー )

2020年1月10日、三井住友フィナンシャルグループにより開設されたイノベーション拠点「hoops link tokyo」にて、給与即日支払いサービス「Payme」を提供する株式会社ペイミーの主催により、「New Career #2 – 大企業からスタートアップで活躍する人物像とは?」と題するイベントが開催された。スタートアップで活躍するビジネスパーソンによる実体験に基づいたトークセッションを通じて、ベンチャー企業で働くことの「リアル」を伝える本イベント。本稿では、その概要を講演レポートとしてお届けする。

撮影:多田 圭佑/文:湯浅 春樹

【登壇者プロフィール(以下、敬称略)】

河端 一寛(かわばた かずひろ)
株式会社Finatext 
東京大学経済学部卒業。博報堂、ボストン・コンサルティング・グループを経て、Finatextに入社。Finatextでは、保険の新規事業立ち上げを主導しつつ、グループ戦略立案や広報業務を行う。私生活では2児の父。

柴田 雅人 (しばた まさと)
株式会社ジラフ 取締役
新卒で入社したグリー株式会社(投資管理部)を経て、第一号社員COOとしてジラフに参画。スママやmagi等のプロダクトオーナーを務め、2019年6月に同社取締役就任。

吹野 加奈(ふきの かな)
株式会社LegalForce 法務開発マネージャー/弁護士
早稲田大学法学部、慶應義塾大学法科大学院卒業。68期長野修習。2016年より株式会社リクルートにて、インハウスローヤーとして旅行領域・住まい領域にて事業支援法務に従事。2019年3月から現職。

石井 達規(いしい たつのり)
株式会社ペイミー 事業開発部
京都大学工学部卒。2017年より双日株式会社にて主に南アジアのインフラ投資事業に従事。2019年10月より現職。現職では、新規事業の立案・実行を担当。

阿久澤:皆さん、こんばんは。本日は、「ベンチャー企業でも大企業でも活躍できる人」というテーマで、イベントを企画させて頂きました。登壇者のパネルディスカッション中に会場の皆さんから頂いた質問も受け付けながら、進めていければと思っています。随時、気になったことを記入して頂ければ幸いです。

まず、簡単に私の自己紹介をさせて頂ければと思います。株式会社Paymeで人事/広報をしております阿久澤と申します。大学卒業後、ファーストキャリアで2012年に株式会社ベネッセコーポレーションという教育大手の会社に入社しまして、マーケティングの仕事を2年半くらいやっておりました。その後、株式会社DeNAというメガベンチャーに転職し、約5年間働きました。在籍中の4年間は新卒採用担当として人事の仕事をしていて、色々な人のキャリアについて考えてきました。そして、2019年9月に株式会社Paymeに転職をしました。国内大手企業、メガベンチャー、そしてスタートアップで経験してきたことを踏まえ、私も登壇者の皆さんに対して、いくつか質問させて頂ければと考えております。それでは、登壇者の皆さんから自己紹介をお願い致します。

登壇者による自己紹介

河端:こんばんは。河端と申します。現在は、Finatextという会社で働いていて、年齢は32歳です。新卒では、博報堂に入社し、マーケティング/プランニング系の仕事をしておりました。約3年間勤務した後、博報堂コンサルティングという子会社に出向になりまして、ブランディングコンサル/マーケティングコンサル等の仕事をしておりました。その後、ボストンコンサルティンググループで新規事業開発に関するプロジェクトに関わった後、2019年2月にFinatextに転職しました。Finatextでは、保険事業の立ち上げ推進やグループ全体のブランディング等を担当しております。私自身、最初の転職の際には、色々と悩んだこともあったので、本日は、そのあたりのお話も出来ればと思っております。宜しくお願い致します。

柴田:こんばんは。株式会社ジラフの柴田と申します。現在、28歳です。前職では、GREEというゲーム会社で働いておりました。元々、起業やスタートアップには興味があって、GREE在籍時から「いつかは起業してみたい」と考えていて、スタートアップ界隈のイベントに参加していました。そんな中、今の会社を支援して頂いているベンチャーキャピタルの方とお会いする機会があって、その方から「いきなり起業するのは大変だし、まずはスタートアップで働いてみたら?」というアドバイスを頂きました。そこで、紹介されたのがジラフ代表の麻生でして、彼と出会った当日に入社することを決めました。当時のジラフは社員が全然いなくて、サービスだけが存在している状態だったのですが、「色々と面白いことが出来そう」と考え、入社を決心しました。

GREEに在籍していた頃は、企業向けのゲームコンサル/投資先の管理等をしていました。ジラフに転職した当時は、本当に人がいなかったので、「とにかく何でもやる」という感じで、様々な業務に取り組んでいました。今は3つある事業のうちの1つであるトレーディングカードアプリ事業の責任者を務めています。私自身、会社が2人だけのフェーズから現在の70人くらいまでのフェーズを経験してきているので、そのあたりについては、色々とお話できる部分はあるのかなと思っております。

阿久澤:有難う御座います。では、吹野さんお願いします。

吹野:株式会社LegalForceの吹野と申します。弊社は、AIで契約書をレビューするサービスを開発している企業です。2017年4月に創業して約2年のスタートアップ企業であり、正式にサービスをリリースしたのは2019年の4月です。私自身のこれまでのキャリアに関してですが、司法試験を受けて、長野で司法修習を1年間行った後に、新卒でリクルートに入社しました。

そして、3年くらい働いた後に、2019年3月に株式会社LegalForceに入社しました。入社した段階では、社員数は10人未満で、本当にいわゆるスタートアップと呼ばれるような状態でした。もちろん、今もスタートアップではあるのですが、社員数は60〜70人くらいに急拡大しております。私自身、スタートアップに転職して本当に良かったと思っておりまして、本日は、スタートアップの良さについて皆さんに少しでもご紹介できればと思っております。

阿久澤:有難う御座います。最後に、石井さんお願いします。

石井:ペイミーの石井と申します。ペイミーでは、新規事業開発を担当しております。2017年に大学を卒業した後、新卒で双日株式会社に入社しまして、海外のインフラ事業投資に主に取り組んでおりました。学生時代にインフラの勉強をしていて、仕事でも関わりたいということで入社したのですが、働いているうちに、自分が仕事に求めていた、人の生活をポジティブな意味で変えられているという実感が得られず、「これって本当に自分がやりたいことだっけ?」という違和感を徐々に感じ始め、そのタイミングでペイミーと出会う機会があって、入社しました。

新規事業開発というのは具体的に何をやっているのかというと、弊社のミッションである「資金の偏りによる機会損失をなくす」ということを実現するために、既存の「前払い事業」だけでなく、様々な事業を通じて顧客に価値を届けたいという思いで、ゼロイチで新たな事業の立ち上げに取り組んでいます。他の登壇者の皆さんと同様、私も転職して本当に良かったと思っておりますので、そこを含めて、本日は色々とお話させて頂ければと思っております。

阿久澤:宜しくお願い致します。この会場にいらっしゃる方々は少なくともスタートアップという存在に興味があって来てくださっている方々が多いと思いますが、実際、「どんな働き方なのかイメージがつかない」「活躍できるのかどうか不安だ」「どうやって会社を探せば良いかわからない」等の悩みを抱えていらっしゃる方も少なくないかと思います。本日は、上記を踏まえ、皆さんの背中を押せるようなイベントにしていきたいなと個人的には思っております。

まず、最初のテーマですが、自己紹介にも含めて頂いたのですが、転職した理由/大企業からスタートアップへの転職で感じたギャップ等があれば、教えて頂ければと思っております。加えて、早速、会場から質問が来ていまして、「これは絶対に聞きたいだろうな」というところかもしれませんが、「年収の変化はありましたか?」という質問です。答えられる範囲で構わないので、そこも含めてお話して頂ければと思います。では、石井さんからお願い致します。

転職した理由と転職先で感じたギャップ。年収の変化

石井:転職活動を開始したきっかけですが、先程申し上げた通り、総合商社で日々の業務に取り組む中で、「これって本当に自分がしたいことだっけ?」という違和感を感じるようになり、その思いが徐々に大きくなっていきました。そして、それが無視できなくなったタイミングで、外の世界を見始めて、今の会社と出会い、事業とビジョン、そして人に惹かれて入社しました。

入社後のギャップですが、もしかしたら「ギャップがなかった」ということが最大のギャップなのかもしれません。私自身、慎重派な面があり、色々と無理を言って、社員さんにたくさん会わせてもらったこともあって、自分の中での期待値調整ができていたので、ネガティブな意味でのギャップについては、ほとんどありませんでした。また、ポジティブな意味でのギャップで言うと、想像以上に自分なりの意見や自走することが求められているなと感じています。前職の双日はやはり伝統的な国内大手企業的なところがあって、上長の了解を得ないと業務を進められないケースも少なくなかったのですが、今の会社の場合、「そもそも自分がどう考えていて、どうしたいのか」を求められることが非常に多く、それはある意味ではギャップと言えるのかもしれません。

阿久澤:私から給与の話をさせて頂くと、他の会社がどうかはわかりませんが、ペイミーの場合、代表の後藤のスタンスとしては、「せっかく入社して頂くのだから、基本的には給料は下げたくない」という方針なんですよね。とはいえ、まだまだ利益が出ていない状態であるという点も踏まえた上で、「候補者の方と相談の上、お互いが納得できる着地点を見つける」ことが私の役目です。続いて、吹野さん、お願い致します。

吹野:まず、LegalForceと出会ったきっかけからお話させて頂きます。企業の法務部で働いていて、日々の業務に対してやりがいを感じながら取り組んでいたのですが、やはりIT化が進んでいない領域が多く、そのあたりに対してストレスを感じている部分があり、「法務部の業務を支援する良いツールはないものか」と感じていました。ちょうどそのタイミングで、私の大学時代の後輩がLegalForceに転職していたので、彼に連絡をして、「どんなツールなの?ちょっと教えてよ」というところから話は始まりました。当時、まだサービスとしてリリースしていなかったのですが、色々とアドバイスを行っているうちに、正式にリリースされたタイミングでオファーを頂きまして、転職することを決めました。

なぜ転職を決意できたのかというと、元々、法務担当者として現場の人をサポートすることにやりがいを感じていたのですが、自分の仕事が社会に対してどのような価値をもたらしているのかという点が自分の中でうまく咀嚼できていなくて、「より社会的にインパクトのある仕事に取り組みたい」と考えるようになりました。LegalForceに入社すれば、自分自身がサービスをつくって、様々な企業の方々に利用して頂くことで、日本の法務、ひいては社会全体が変わっていくのではないかと考えると、心の底からワクワクしました。ずっとバックオフィスでやってきた自分にとっては、サービス開発に関わることが出来るなんて夢にも思っていなかったので、「こんな機会はなかなかない」と考えました。

もうひとつは、弊社は将来的にはIPOを目指しているのですが、スタートアップで組織づくりに携わって、上場までのプロセスに関与することが出来るというのもなかなか得難い機会だと考え、転職を決めました。ギャップで言うと、土日も働くことを覚悟して入社したのですが、労働環境が意外に整っていて、その点については、ギャップとして感じました。年収についてはそこまで変わっていません。弊社では、自己実現の延長で働いているという人が多くて、日々の業務をみんなで楽しんでやっていることが魅力かなと感じています。

阿久澤:有難う御座います。では、柴田さんお願いします。

柴田:正直、学生時代は「あまり働きたくないな」と考えていまして(会場笑)、ただ、当然ながら、お金がないと生活が送れないので、お金を稼ぐという意味で、起業やスタートアップが良いのでないかと考えていました。GREEに在籍していた時も、起業しようと色々と考えていたのですが、いざ会社を辞めて起業しようとなると、やっぱり怖くて、やっていける自信が無かったので、まずはスタートアップに転職しようと考えました。その時に、今の会社の代表に出会いました。当時は、モノを売るときに買取サイトの口コミがわかる「ヒカカク」という情報サイトを展開していたのですが、今後の会社としての方向性等を聞いて、「おもしろいな」と思ったので、しばらく考えて、転職を決めました。

ギャップとしては、正直、当時はそこまで長く在籍することは想定していなくて、「別に合わなければ辞めれば良い」と思って入社したこともあって、あまりギャップとして想定していたもの自体が無かったかもしれません。

阿久澤:「こんなに長く在籍することになるとは思っていなかった」とのことですが、でも、結果として、会社の事業成長を牽引している訳じゃないですか。その分かれ目って、何だったんですか?

柴田:そうですね。人が限られている中で、そもそも弊社に入社してくれること自体が本当に有難いことだなと感じるようになって、「責任感」のようなものが徐々に生まれ始めたことですかね。あとは、単純に仕事が面白いということがあります。現在、事業責任者を務めていますが、やはり事業をつくるということは、ユーザーにより良い体験を提供することができること/何も無いところから価値を生み出すことができることに意味があると思っています。なので、今は働きたくないとかはまったく思っていなくて(会場笑)、チーム全員で価値を生み出すことが面白いと考えているので、結果的に続けているという感じです。

阿久澤:有難う御座います。では、河端さんお願いします。

河端:転職を考えたきっかけですが、元々、大学時代からスタートアップや起業自体に興味はありまして、大学受験の延長で、難しい問題を解いて、お金を稼ぐということが面白そうだなと思っていました。新卒では、それなりに規模の大きな会社で、なおかつマーケティング業務のような売上に近いところで仕事をしたいなという理由で、博報堂に入社しました。様々なクライアントとの出会いや海外カンファレンスへの参加を通じて、事業の意義というのは単にお金儲けをすることではなくて、ユーザーの生活を豊かにすることであったり、ユーザーの人生にインパクトを与えることなのだと思うに至り、スタートアップへの参画を本気で考えるようになりました。

ただ、そこからいきなり踏み出すことはできず、経営の視点を別の角度から見るために、コンサルティングファームに入社しました。その後、Finatextに入社した理由ですが、弊社CFOの伊藤が大学時代からの知人で、彼に声をかけてもらったというのが最初のきっかけです。でも、入社の一番の決め手は、Finatextが掲げている「金融をサービスとして再発明する」というビジョンのスケール感や目指している方向性が自分がスタートアップに参画したいと思う理由とマッチしていたことです。

当時は、金融自体にはそれほど興味がなかったのですが、徐々に面白そうだなと思うようになり、転職を決めました。ギャップとしては、当然、大企業のようには社内体制が整備されていないので、色々と不足していたりする部分はあるのですが、やはりデッドラインへの考え方が凄く違うなと思っています。例えば、広告代理店/コンサルティングファームの場合、デッドラインはクライアント側が決めるケースが多いのですが、現在は、事業立ち上げをリードする立場として、デッドラインを自分で決める立場にあります。

それを守るも守らないも自己責任であり、ある意味、誰にも怒られない環境なので、ズルズル行ってしまうことが過去にはありました。そのあたりについては、自分でも反省しましたし、デッドラインに対する責任や規律をしっかりと持った上で、事業を推進していくことの重要性を感じました。年収については、前職と比べると下がってはいますが、別の方法でお互いに納得できる形で組んでもらっています。

阿久澤:有難う御座います。皆さんから質問を頂いていて、「転職に際して、不安はなかったのか?」「何かを捨てたりはしていないのか?」というところが気になっているみたいです。良いことばかりではなくて、「ここは不安でした」「ここは悩みました」等があれば、教えて頂きたいと思います。

転職の際に感じた不安や捨てたことは何か?

河端:博報堂に在籍していた時は、すでに結婚していて、子供もいたので、やはり妻と子供の生活レベルを担保するという点が不安ではありました。そこで、60年後くらいまでの生活費シミレーションをスプレッドシートを活用して作成しまして、「最悪シナリオ」でも大丈夫ということで、転職を決意しました(会場笑)。

阿久澤:有難う御座います。ほかに、「これは諦めた」等はありますか?では、吹野さんお願い致します。

吹野:そうですね。大企業の方が住宅ローン等は組みやすいかもしれません。

石井:それはありますね。私も転職する時は社会人3年目でしたが、ローンを組んで、家を購入しようかなとも考えていました。

河端:確かにマイホームは大企業にいる間に買っておいた方が良いかもしれませんね。私自身、博報堂に在籍していた頃に家を買いまして、ボストンコンサルティンググループに転職した際に住宅ローンの借り換えをしようとしたら、年収自体は上がっているはずなのに、審査すらしてくれなかったので、勤続年数等も含め、先んじて考えておく必要はあるのかもしれません。

阿久澤:有難う御座います。それでは、次の質問に移りたいと思います。大企業とスタートアップで活躍する人の共通点/相違点について教えて頂ければと思います。

活躍する人の共通点・相違点

河端:相違点について、思ったところで言うと、大企業においては、いわゆる「調整力」が必要になる場合があって、実は、それが大きな組織を動かしていたりする側面があります。一方で、スタートアップ企業であれば、もちろん「調整力」はあった方が良いのですが、それほど必須のスキルではないように思います。もちろん、スタートアップ企業でも、大企業と仕事をするケースはあると思いますので、そういった能力があれば、スムーズに話を進められる面はあるのかもしれません。

阿久澤:金融系のスタートアップであれば、伝統的な大企業の方々と仕事をする機会もあると思うのですが、上記のような「お作法」というのは、やはり大企業の中にいるからこそ学べる部分はあるのでしょうか?

河端:そうですね。大きな組織・多様なステークホルダーの方々の思惑に配慮した上での物の伝え方や資料の作り方をはじめとして、その状況に身を置かないと、見えないものもあるのかなと思っています。

阿久澤:そのあたりって、スタートアップ企業では学べないものなのですか?

河端:スタートアップ企業の場合、そもそも必要ないケースが多いですね。やはり価値の置き所が違うので、スタートアップ企業であれば、「そんなことを学んでいる前に事業を進めろよ」という話になるのかもしれません。

阿久澤:なるほど、有難う御座います。柴田さんはどうでしょうか?

柴田:少し重複しますが、やはり組織が大きくなると、社内外のステークホルダーの数が増えて、説明責任も増えていくため、どうしても型にはまった形で進めていく必要は出てくるかと思います。逆に言うと、スタートアップの場合、ステークホルダーの数が大企業のようには多くないため、早く手を動かすことがより重要だと思っています。そのあたりの塩梅はなかなか難しいですが、うまくやれる人はどの組織でも活躍できると思っています。

阿久澤:スタートアップの場合、「行動することが正義」という側面があると思います。マインド的な観点で言えば、具体的には何が必要なのでしょうか?

柴田:完璧主義だと難しいと思っていて、失敗した後に、次はどうすれば良いのかをしっかりと考えることが大切だと思います。

特に、新規事業の場合、仮説を素早く検証して、「うまくいった選択肢をガッツリ進めて行きましょう」ということを繰り返すことになるので、個々の失敗に対して悲観的になることなく、成功のために必要な失敗に積極的にぶつかっていく前提で、仕事に取り組むマインドを持つことを意識すべきだと思います。

阿久澤:有難う御座います。吹野さんに聞いてみたいと思います。

吹野:活躍する人はどちらでも成果を出すことができると思いますが、相違点としては、皆さんがおっしゃるように、大企業では「調整力」が評価されるケースがあると思います。もちろん、スタートアップでもそういった能力が評価されない訳ではないのですが、どちらかと言うと、主体的に動ける人が評価されるのかなと思います。

あとは、学歴や職歴といったスペックについては、スタートアップではまったく関係ないと個人的には思っています。弊社でも、「エクセルなんか触ったことありません」というような若手の方がいらっしゃったのですが、すごくガッツがあって、その方は契約書レビューの精度を改善する組織に在籍しているのですが、あっという間に仕事を覚えていってくれています。最近では、私にエクセル関数を教えてくれたりしていて、とにかく凄まじい吸収力で、自分から率先して意見も出してくれているので、今後の活躍が非常に楽しみだなと思っています。

阿久澤:有難う御座います。石井さん、どうでしょうか。

石井:共通点で言うと、やはり優秀な人、特に自分の頭で考えて実行できる人はどこでも活躍できると思っています。相違点で言えば、活躍の定義が難しいですが、大企業における活躍を「出世」と定義したとして、それを目指すなら、上の人に言われた業務を速く正確にこなすということが必要で、そういった業務が得意もしくは好きという人が大企業にマッチするのではないかなと思っています。スタートアップで活躍できる人は、同僚を見ている限り、自分で課題/期日を設定して、スピード感を持って、アウトプットを出せる人ではないでしょうか。

阿久澤:有難う御座います。皆さんから質問が来ているのですが、「面接の際はどのようなところを見ていますか?」という質問です。柴田さん、いかがですか?

柴田:私の場合、「今までどのようなことに取り組んできたのか」を聞いて、具体的なエピソードを掘り下げますね。その説明を聞けば、仕事に対するスタンスがある程度はわかると思っています。

阿久澤:失敗や苦悩等について聞くと思うのですが、どんな答えだったら、「良いな」と思うのでしょうか。

柴田:失敗の原因を自分なりに咀嚼できているかどうかは重要だと思っています。「同じことが起きたら次はどうするの?」と聞くと、失敗を自分なりに分析できているかどうかに加えて、本気で仕事に取り組んでいるかどうかも見えてくると思います。

阿久澤:有難う御座います。他に何かありますか?

河端:大事だと思う点は2点あります。一つは自責の思考、もう一つは柔軟に自分を変えられるかどうかです。弊社の場合、金融関連の事業に取り組んでいることもあって、40〜50代の方々とお話しする機会も多いのですが、50歳手前の方でも新しい業務に積極的に挑戦している方々がいらっしゃって、そのような方々のチャレンジする姿勢は本当に素晴らしいなと思います。面接の際に何を見るのかと言うと、自責の思考に関しては、「なぜ転職をするのか」という質問に対して、何かのせい/誰かのせいにするのではなくて、自分のゴールに向かっていることが垣間見れるかどうかを個人的には重視しています。

阿久澤:有難う御座います。そろそろ会場の皆さんから直接質問を頂こうと思います。

会場からの質問:Q&Aタイム

自身の転職市場における市場価値を高めるには

ー 転職を考える際に重要なのが、自分の転職市場における市場価値だと思うのですが、市場価値を高めるために普段から仕事やプライベートで何を大切にすれば良いのかを聞きたいなと思います。

河端:私の場合ですが、結論から言うと、「市場価値」自体はあまり意識していなくて、目の前の仕事にきちんとコミットして、努力し続けること、自分がきちんと成長し続けられることが大事だと思っています。場合によっては、「市場価値」としての評価がつかないこともあるのかもしれませんが、「自分の中での経験値が蓄積して成長できていれば、数字としての市場価値は気にしない」と開き直っています。

石井:私自身、総合商社に在籍していた頃は、ファイナンスの専門性を身につけて市場価値を高めてから転職しようと考えていたのですが、そもそも市場価値を高めるのは自分のやりたいことを仕事にするための手段でしかないと思っています。自分の場合、幸いなことに、目の前に自分のやりたい仕事ができるチャンスがあったので、いわゆる“市場価値”を上げることは一旦は置いておいて、そこに飛び込んで全力でやりきれば後悔しないんじゃないかというマインドになり、転職する決断を下しました。今は新規事業開発をやりきることで、結果として、当初の想定ではないにせよ、市場価値を高めることはできると思っており、「そこまで気にしていない」というのが回答になるかと思います。

阿久澤:有難う御座います。皆さんのお話を聞いていると、もともと知り合いがいたとか知り合いの会社というケースも多かったように思うのですが、今から転職活動を始めようと考えたタイミングで、実際にどれくらいの選択肢があったのか/どのくらいの数の企業を受けていたのか等が気になっているみたいです。また、スタートアップへの転職を考える際に、おすすめの方法等があれば教えて頂きたいです。

転職の際にどのくらいの数の企業を受けていたか?

柴田:スタートアップといっても規模によって話が変わってくるんですけど、TwitterでDMを送ったりすれば、会ってくれる場合も多いので、そこで話を聞くのが良いかなと思っています。公開情報というのは、ある種の意図を持って作られた情報でもあるので、特に小さい会社の場合は、一度会って話を聞いてみるのが良いかなと思っています。

阿久澤:小さくてイケてそうなスタートアップって色々とあると思うのですが、その中で、どうやって自分の中で会社を絞っていけば良いのかという点について、何かアドバイスはありますか?

柴田:もちろん、何をやりたいのかによると思うのですが、「自分はこういうことをしたい」「この会社だとこんなことができそう」というような仮説を自分の中で持った上で、実際に会社の中の人に会って、話を聞くのが良いと思います。入社するというよりかは、「何かを成し遂げるために会社に在籍する」というスタンスが個人的には良いのかなと思います。

阿久澤:有難う御座います。では、吹野さん、お願い致します。

吹野:実際、足を運ぶことは大事だと思います。弊社では、元々の知り合いがいない状態で入社するケースも多いのですが、社員とたくさん話をして、雰囲気を見て、安心して入社してくれる方も多いです。そういった部分は転職の際は重視すべきなのではないかと思います。

阿久澤:有難う御座います。会場の皆さんからも質問を頂きたいのですが、どうでしょうか?

どのような言葉で転職を決心したのか?

ー 会社を選ぶ際に、「事業ベース」で選ぶ場合がある一方で、「人ベース」で選ぶ場合も多いと思います。どのような言葉で転職を決心したのかについて知りたいです。

阿久澤:事業の内容だけではなく、社長や面接官の方がどのような言葉をかけてくれて、入社の「決め手」になったのかという話ですね。

石井:ありきたりですが、「一緒に会社を大きくして社会を変えよう」という言葉が刺さりました。自分の頑張りが会社の成長に繋がって、結果、自分が世の中に提供していきたい価値を届けられる、そして、その範囲がどんどんと広がっていくというイメージがついたのが、決め手になりました。

阿久澤:他に、「この口説き文句がグッと来た」等はありますか?

柴田:当時、事業内容に関する説明をされて、「どうですか?」という感じでして、とにかく事業を伸ばすことだけを求められていたので、口説き文句とかはなかったですね。

河端:口説き文句ではないのですが、弊社CFOの伊藤から「マーケティングまわりでちょっと教えてよ」という感じで、週1の不定期でのディスカッションを半年くらいしていて、そのまま関与の度合いを上げていったという形ですかね。

阿久澤:最初のうちは、「ちょっとお手伝いしよう」くらいの感覚だったんですか?

河端:そうですね。最初の段階では、「お手伝い」ですらなく、「壁打ち」でしたね。

吹野:私の場合ですが、元々、大学時代の後輩が弊社でCOOを務めているのですが、代表がCOOに対して絶大な信頼を置いていて、「彼が良いと言うなら良いと思うよ」という感じでしたね。ある時、御飯を食べている時に、代表が理想を語っていて、それに対して、COOがロジックで突っ込んでいくみたいな光景を目の当たりにしたことがあって、ビジョナリーとロジカルのバランスが非常に良いなと思ったことが印象に残っています。

阿久澤:トップの関係性とかを見ると、社内の雰囲気がわかって良いですよね。石井さんはどうでしたか?

石井:代表とたまたま大学時代に面識があり、メッセンジャーで連絡をもらったことがきっかけでした。代表はビジョナリー、CFOはロジカルなタイプで、この会社は凄くバランスが良いなと思いました。「口説かれた」という感じはなくて、自分で色々と調べているうちに、どんどん興味が湧いてきて「凄く良い会社だな」と感じ始めました。「自分で勝手に口説かれていった」みたいな感じでしょうか。

採用の際に候補者の方を「口説く」ために意識していること

ー 採用の際に「口説く」ために意識していることがあれば、教えて頂きたいです。

阿久澤:私自身、人事という立場なので、ペイミーで意識していることを共有させて頂ければと思います。まずは、その人にとって「何が刺さるのか」を正確に把握することが重要だと思っています。例えば、社長の大きなビジョンに心が高揚するタイプの方もいらっしゃいますし、「経営陣が緻密に数字を見ている」ところに安心感を感じるタイプの方もいらっしゃいます。何を重視するかについては、本当に人によるので、それを最初の面談で発見できるかどうかが大事だと思っています。では、皆さん、大勢の前で質問するというよりかは懇親会で話を聞きたいという方もいらっしゃると思うので、一旦、質問はここで終わりたいと思います。最後に、転職を考えている人に対して、皆さんから「背中を押すメッセージ」を頂きたいなと思います。宜しくお願い致します。

最後に:背中を押すメッセージ

柴田:先程もお話しましたが、まずは、その会社で働いている人に会うのが良いと思います。ネットで得られる情報は必ずしも信用できるものばかりではないので、一番良いのは業務委託等で働いてみることだと思いますが、それが難しければ、中の人とお話をしてみるのが良いと思います。

河端:私の場合、「目がキラキラしている人と働きたい」と新卒の頃から言っているのですが、その会社で働くことによって、自分がワクワクするのかという点を重視して、(転職するのであれば)転職先を選ぶのが良いと思っています。そういった意味でも、実際に会ってみることは大事だと思います。特に、自分の仕事を語るときに嬉々として語っているか等は雰囲気として出ると思いますし、重要なポイントだと思います。

石井:この会場にいらっしゃる方は、現状の自分に対して何らかの違和感を持っているからこそ、わざわざお越し頂いていると思っているので、何となく話を聞いて終わりにするのではなく、是非、次のアクションを自分なりに考えて頂ければと思っています。もし、自分の中の違和感を解決するために、今後、仕事内容や一緒に働く人を変えていく必要があるということを多少なりとも考えているのであれば、知らないことに興味は持てないので、外の世界を知ることは非常に重要なことだと思っています。今日のイベントが皆さんの次のアクションにつながるきっかけに少しでもなれば嬉しいです。

吹野:二つあると思っています。一つは実際に足を運ぶこと、もう一つは、「自分にとって働くとは何か」についてしっかりと考えて欲しいということです。転職は自分がどのように生きたいのかを見つめ直すための良い機会になると思います。外の世界を見ること/自分自身を見つめ直すことの2軸で考えるべきだと思います。

阿久澤:いきなり転職を考えるのではなく、まずは、「自分という人間はどのような時にワクワクするのか」を考える必要があるということですね。また、続きについては、懇親会で直接聞いて頂ければと思います。皆さん、本日は有難う御座いました。

執筆者:勝木健太

1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。執筆協力として、未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)などがある。