企業という「枠」は溶けていき、働き方はミッションドリブンなプロジェクトの「塊」となる──不確実な時代に必要な「越境学習」の重要性

2020年6月2日、経営者・人事担当者・事業担当者を対象として、「越境で作る、これからの時代に強い組織」と題するオンラインイベントが開催された。本稿では、イベント内で実施された法政大学大学院政策創造研究科 教授 研究科長 石山 恒貴氏の講演に加えて、外部人材の導入を通じた企業の成長支援に取り組む3社(INTLOOP株式会社/株式会社コーナー/株式会社クラウドワークス)のパネルディスカッションの一部を抜粋する形で講演レポートとしてお届けする。

講演「これからの組織力の高め方」 

石山 恒貴 氏 / 法政大学大学院政策創造研究科 教授 研究科長
一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了、博士(政策学)。一橋大学卒業後、NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。越境的学習、キャリア形成、人的資源管理等が研究領域。日本労務学会理事、人材育成学会理事、NPO法人二枚目の名刺共同研究パートナー、フリーランス協会アドバイザリーボード、早稲田大学・大学総合研究センター招聘研究員、一般社団法人トライセクター顧問、NPOキャリア権推進ネットワーク授業開発委員長、一般社団法人ソーシャリスト21st理事、一般社団法人全国産業人能力開発団体連合会特別会員、有限会社アイグラム共同研究パートナー、専門社会調査士

以下、敬称略

石山:皆さん、宜しくお願い致します。本日は、「越境で作る、これからの時代に強い組織」というテーマでお話させて頂ければと思います。ご覧の通り、本日のイベントはオンライン形式で開催させて頂いておりますが、私が在籍している法政大学においても、今年の4月からWeb会議ツール「zoom」を利用したオンライン形式の授業に移行しています。私自身、最初はオンライン上でのコミュニケーションに若干の不安を感じていたのですが、いざ使ってみると、チャットもできるし、グループ討議にも適しているということで、かなり便利に感じております。「リアルの授業に比べて質問がしやすい」という声も学生からは出ているようです。もちろん、ちょっとした雑談を行う場合は、オフラインのコミュニケーションに分があると思われますが、変化の激しい時代においては、このような新しい技術/ツールを積極的に取り入れていく姿勢がますます求められるようになるでしょう。

企業という「枠」は溶けて、働き方はミッションやプロジェクトの「塊」になる

このようなテクノロジーの発達に伴う働き方の変化については、ここ数年、政府も大いに注目しておりまして、2016年8月に厚生労働省から『働き方の未来2035』という報告書が公表されています。

この報告書の中では、「2035年には企業という『枠』が溶けて、働き方はミッションや目的が明確なプロジェクトの『塊』となる」ことが言及されています。

2035 年の企業は、極端にいえば、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、多くの人は、プロジェクト期間内はその企業に所属するが、プロジェクトが終了するとともに、別の企業に所属するという形で、人が事業内容の変化に合わせて、柔軟に企業の内外を移動する形になっていく。その結果、企業組織の内と外との垣根は曖昧になり、企業組織が人を抱え込む「正社員」のようなスタイルは変化を迫られる。

出典:「働き方の未来 2035」~一人ひとりが輝くために~

もちろん、会社組織が世界中からゼロになることは現実的には考えにくいでしょう。その一方で、同じ組織に所属する人と長い時間をかけてプロジェクトに取り組まなければ大きな「コト」を成し遂げることができなかった時代は過ぎ去り、たった数人のチームで革新的なプロダクトを創り出す時代に突入しつつあるように思います。

「この人は一体何ができる人なのか」が問われる

このような潮流を踏まえると、今後は、「プロジェクトベースで成果を出すことができる人材」が求められるようになると思います。いわば、映画『オーシャンズ11』の世界ですね。これはどういうことかと言うと、これまでは「◯◯会社の◯◯さん」であることが大きな価値を持っていたのですが、これからは「◯◯ができる◯◯さん」であることが重要な意味を持つようになるということです。アフターコロナの世界において、テレワーク化の流れが加速すれば、「この人は一体何ができる人なのか」ということが会社内部においても問われるようになるでしょう。そうなると、組織・個人を問わず、急速な変化に対して迅速に対応するマインドセットがますます問われるようになります。そして、そのような局面で必要となるのが、「越境学習」だと考えています。「越境学習」に関するお話をさせて頂く前に、「タレント」という言葉についてあらためて考えてみたいと思います。

「タレントの時代」が始まる

タレントというのは、日本では芸能人のことを連想しがちですが、本来的には「才能がある人」のことを指します。聖書の中でも言及されている「タラント(天賦の才能)」が元々の語源と考えられています。個人的な見解を述べると、これからはまさにタレントの時代になっていくと考えています。そして、タレントになる上で、効果的な方法の一つが今回のテーマでもある「越境学習」です。

「越境学習」とは、端的に言うと、会社の外で学ぶことを意味します。スポーツの世界においては、ホームとアウェイの概念があります。ホームというのは、「安心できるけど、刺激がない場所」。一方、アウェイは、「知らない人がいて社内用語も通じないけれど、刺激がある場所」のことです。不確実な時代においては、ホームとアウェイを行ったり来たりして、継続的な刺激や学びを得ることによって、タレントに近づいていく必要があると考えています。

「越境」は常に刺激があって然るべき

ちなみに、会社組織における人事異動をアウェイと捉える向きもあるのですが、私の中では明確な区分を設けています。もちろん、人事異動それ自体は非常にポジティブな刺激をもたらしてくれるケースもあるのですが、段々慣れてくると、いつの間にかアウェイだったはずの場所がホームへと変化してしまいがちです。そうなると、ホームからホームへの一方通行になってしまいます。しかし、言うまでもなく、ビジネスにおける「越境」は常に刺激があって然るべきですし、絶え間ない成長を実現する上で、自分自身にとってアウェイな場所を自発的に用意し続けることが大切なのではないかと考えています。

越境学習で得られるメリット

「越境学習」によって得られるメリットとしては、上下関係が存在しないこと、社内用語が通じないといった異質性があること、決まり切ったルールが無い中で、何をやるかを決めていく必要があること等が挙げられます。これらのメリットを享受することが、抽象度の高い共有型リーダーシップを獲得することに繋がっていきます。

また、建設的な失敗を数多く経験できることも「越境学習」を通じて得られるメリットの一つです。「越境学習」によって、「失敗を通じてここまで多くのことを学べるのか」と思えるようになりますし、「自分の前提はあくまで会社組織の中での前提に過ぎなかったんだ」ということをあらためて認識することができます。組織内における暗黙の前提を見直すことや本来的に取り組みたかった仕事に気付くきっかけになるかもしれません。

越境学習の有効な手段としての副業・兼業

ここまで述べてきたように、タレントになるためには、自発的な学習機会を継続的に設ける「越境学習」が非常に効果的です。その手段の一つとして大きな注目を集めているのが「副業・兼業」ですが、まだ8割くらいの企業が「副業・兼業」による外部者の受け入れを嫌がっているという現状があるようです。

参考:兼業・副業による人材の受け入れニーズ調査報告書(株式会社学情 / 株式会社パーソル総合研究所)

その理由としては、「企業秩序」が乱れるということが第一に挙げられています。また、「どういう人材がくるかわからない」という反対理由もあるようです。

民間の人材を受け入れる広島県福山市

一方で、うまくやっているところもあります。例えば、私の研究室で共同研究に取り組んでいる広島県の福山市は、「自前主義の限界」を強く認識しており、民間の人材を受け入れる土壌を積極的に整えています。また、外部人材とコラボすることで得られるメリットについてですが、個人としては、視野が広がること/幅が広がることが挙げられ、組織としては、縦割りで凝り固まった企業文化が刷新されること/これまでリーチできなかった人材にリーチできること等が挙げられます。

とはいえ、外部人材の活用については、やはり民間の方が進んでいるように思います。ただ、それでも、外部人材とのコラボレーションはまだ道半ば。外部人材を適切に活用し、組織をどのように活性化していくかが今後の議論のポイントとなるでしょう。

欧米のジョブ型雇用であれば、職務範囲が明確に区分されています。その一方で、日本の場合、メンバーシップ型雇用が中心的であり、職務の区分が非常に曖昧なケースも少なくない。むしろ、わざと仕事を曖昧にしている側面もありますが、日本的なメンバーシップ型雇用のメリット/デメリットを踏まえつつ、外部人材をいかにうまく活用していくかがこれからの組織の競争力を左右するでしょう。

越境文化の醸成に成功したAGCグループ

越境文化の醸成に成功した事例としては、AGCグループのCNA(Cross-divisional Network Activity:部門横断的ネットワーク活動)が有名です。このケースで興味深いのは、当初は短期的な成果を出すことを求めていたものの、途中で経営陣がその方針を転換し、やりたい人だけが取り組む自発的な活動という位置付けに変えてから、活動の成果が生まれ始めたことです。「サードプレイス」と呼ばれる第3のコミュニティを社内につくることで、組織の中で様々な人が自発的に集まる場所をつくった点が注目すべきポイントだと思います。

誰もが自立したタレントになる必要がある

以上の話をまとめると、これからの時代は不確実性が高まり、寿命も長くなることが予想されるため、業種・職種を問わず、あらゆるビジネスパーソンは自立したタレントになる必要に迫られるということです。そのような状況になれば、個人の学びも社内/社外を行ったり来たりする必要があるため、「越境学習」の重要性もますます高まると思われます。しかし、日本人ビジネスパーソンはタレントを目指すという考え方に不慣れな部分がありますし、どちらかと言えば、以心伝心なコミュニケーションを重視する傾向にあります。多様性を重んじる土壌もまだまだ育ちきっていないことを考慮すると、欧米のやり方をそのままコピーしても上手く機能するとは限りません。これらを踏まえ、日本型雇用システムに上手く接続する形で、越境を実現する方法を考えていくべきではないかと思います。

学びを止めない人が求められる時代に

江戸時代の儒学者で、佐藤一斎先生という方がいらっしゃいます。佐藤先生の言葉の中で有名なものとして「少にして学べば、則ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば、則ち老いて衰えず。老いて学べば、則ち死して朽ちず」がありますが、学びというものは、何かの目的のために行うべきではなく、人生をいかに生きるかを考えて、行うべきだと思います。

また、芸術家のピカソは、「すべての子供はアーティストである」という言葉を残しましたが、これは学びの文脈に置き換えた場合でも、非常に重要な示唆を含んでいると思います。大人になると、多くの人は学びをストップしてしまいがちですが、これからの時代において求められる人というのは、何歳になっても学びを止めずに好奇心を爆発させるような人だと思います。日本においても、外部人材との協働(コラボ)が進むことで、その流れをつくることができればと思います。

パネルディスカッション「成功・失敗事例から紐解く、強い組織の作りのコツ」

第1部の講演内容を踏まえ、第2部のパネルディスカッションでは、外部人材の活用を通じて企業の成長を支援する3社(INTLOOP株式会社/株式会社コーナー/株式会社クラウドワークス)から、組織改善やデジタルトランスフォーメーション(DX)推進等に関する具体的なプロジェクトの成功/失敗事例が共有された。

金栗 一憲 氏 / INTLOOP株式会社 コンサルティング事業本部 パートナー
大阪府立工業高等専門学校(現大阪府立大学工業高等専門学校)卒業。NTTデータ、SAPジャパン、KPMGコンサルティングを経て、現職。 大手製造業、商社、重工業、エアラインサービス企業向けに、ERPを活用したBPR・基幹システム導入プロジェクトに従事。 企画立案・計画策定から、要件定義・導入、海外展開(ロールイン・ロールアウト)、 運用定着化・改善のコンサルティング、プロジェクトマネージメント経験を有する。 常にお客様視点で課題に向き合うこと及び、お客様の気づかないことに気づき適切な行動をとることが、自己の付加価値であると考え活動している。サービスページはこちら

小林 幸嗣 氏 / 株式会社コーナー 取締役 COO
新卒で株式会社インテリジェンスに入社。転職サイトdodaの立ち上げ期より、トップコンサルタントとして活躍。その後営業部門、企画部門のマネージャーを歴任し、最年少統括部長として100名超の組織マネジメントを行う。doda Recruitersや地方創生プロジェクト等、多数のプロダクトや事業の立ち上げを経験。2018年に取締役として参画。サービスページはこちら

中山 恵太氏 / 株式会社クラウドワークス 執行役員
慶應義塾大学卒業後、2007年株式会社リクルートエージェント(現 株式会社リクルートキャリア)入社。中途・新卒領域における人材サービス営業の他、新規サービスの事業開発担当としてサービス企画&営業企画を経験。2015年2月、株式会社クラウドワークスに参画。クラウドソーシングのエンタープライズ向けサービスのセールス組織のマネジメントや新規事業開発を経て、フリーランスのエンジニア・クリエーター向けエージェントサービス「クラウドテック」の事業部長に従事。2019年10月、同執行役員に就任。サービスページはこちら

各社のプロジェクト成功事例

INTLOOP株式会社の事例

石山:まずは、金栗さん、プロジェクト概要についてお話いただけますか?

金栗:宜しくお願い致します。スライド資料をご覧頂ければと思いますが、売上高600億円規模の化学メーカーの情報システム部門向けに、DX関連のコンサルティングサービスを提供させて頂いた事例です。どちらかと言うとこれまで保守の役割を担っていた情報システム部門が主導する形で、新しいプロジェクトを立ち上げる必要があり、そのタイミングで我々がご依頼を頂いたという経緯です。

プロジェクトリーダーの私に加えて、外部人材(1名)の方に入って頂いて、戦略策定/企画・構想策定等を実施しました。最終的に、ERPで業務システムを刷新することが決定したのですが、この状態に到達するまでに約1年の期間を要しました。具体的には、技術的な問題よりもコミュニケーション面のすり合わせで様々な苦労がありました。ERPの刷新プロジェクトというのは、二桁億円程度の費用がかかることが通常なのですが、今回、「3年間はかかるだろう」と言われていたプロジェクトの期間を2年間に抑えることに成功し、数億円のコスト削減につなげることができました。

石山:有難う御座います。「情報システム部は変革が苦手」というお話は直感的に理解できるのですが、やはり社内リソースだけで変革を行うことは難しいのでしょうか?

金栗:そうですね。外部人材がプロジェクトに入ることで、社員の立場ではなかなか言いにくい意見を第三者の立場から率直にお伝えすることができます。言うなれば、「これを言ってしまうと、社内的に角が立ってしまう」箇所を外部人材が適切な方法でお伝えするようなイメージです。ミーティング前にあらかじめ役割を決めておくことも大切で、あえて「憎まれ役」を買ってでも、プロジェクトを前に進めることが我々の役割だと考えています。

石山:スライド資料の中で「会社全体のシステムがレガシー化・スパゲッティ状態に」という箇所がありますが、現場の方々の中では、危機感はあったのでしょうか?

金栗:「まずいな」という認識は持たれていました。しかし、手を上げてしまうと、自身の担当範囲になってしまうが、それは他の業務との兼ね合いもあってリソース的に厳しいという状況でした。その後しばらくして、「さすがにまずい」という状態になった段階で、ご依頼を頂いた形です。

石山:有難う御座います。あとは、あえて「憎まれ役」になるというお話がありましたが、ズケズケ言っても嫌われないコツ等はありますか?

金栗:コツとは言えないのですが、正しいと思った信念がブレないように心掛けることが大切だと思います。私自身、情報システム部門の部長の方とは何度も喧嘩をしたことがありますが、やはり信念がないと言動に一貫性がなくなってくるものです。クライアントの部門や会社にとって、「こうあるべきだ」ということをポジションを取って率直に伝えることを価値観として重視していました。

株式会社コーナーの事例

石山:有難う御座います。続きまして、株式会社コーナーの小林さん、お願い致します。

小林:宜しくお願い致します。一般的に、外部コンサルというのは、専門的な知見を提供することに加えて、現場と経営の「調整弁」の役割を担うことを求められるケースが多いと思いますが、我々の専門分野である人事領域においては、組織におけるウェットな部分に積極的に関与していく姿勢が特に求められるケースが多いと考えています。下記のスライドでもご紹介させて頂いているクライアント(※ スライド/社名は非公開)の事例では、資金調達を完了し、エンジニア採用を強化するタイミングで、弊社をご利用頂きました。

このプロジェクトでは、エンジニア採用の知見を持つ外部人材の方にプロジェクトに入って頂きました。意外なことに、クライアントから最も喜ばれたのはウェットな調整弁的な役割を果たしたことでした。この事例では、リファラルで人材を採用した際に、経営者が見る目線と現場の責任者が見る目線にギャップが生じてしまっているという課題がありました。それを解決すべく、弊社経由でアサインされた外部人材の方が、両者との面談を繰り返しながら、現場が求める人材像と経営が求める人材像を適切に摺り合わせる作業を行っていきました、

ポイントは、経営の視点・マネジメントの視点・現場の視点のすべてを的確に把握した上で、プロジェクトを推進することにあると思います。今回のプロジェクトに関しては、アサインされた外部人材の方の資質の高さも勿論あるのですが、最初の段階で「誰が何をやるのか」の役割分担を明確化することによって、プロジェクトをスムーズに運用することが出来たと考えています。

石山:有難う御座います。外部人材の価値としては、専門的な知見といったハード面を活かすのはイメージが湧くのですが、ウェットな調整弁的な役割を果たすという点については、社内の人材でも出来るのではないかと思ってしまうのですが、あえて外部人材がサポートに入ることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

小林:金栗さんのお話と重複する部分があるのですが、一つは、クライアントに対して率直な意見を忌憚なくお伝えすることができる点だと思います。あとは、数多くの他社事例に関する知見を有していることですね。やはり、1社しか見ていないと、自社のカルチャーが良いか悪いかの判別がつかないことも多い。様々な人事組織の成功/失敗パターンを実体験ベースで蓄積していることは大きな強みになり得ると思います。

石山:有難う御座います。「役割分担を明確にする」というお話がありました。これについて、詳細にお伺いしたいです。

小林:今回のケースで言うと、プロジェクト開始前に3〜4回のミーティングを実施することで、「どの順番で何を解決するのか」を事前に明確化していきました。具体的には、社員でなければできないこと/外部人材でも出来ること等を整理していきました。また、我々は縦でも横でもない「斜め」の位置にいるような立場なので、現場の社員の方が社内のリアルな課題を吐露してくれやすい場合があります。彼らの不安や不満を適切に吸い上げながら、プロジェクトを前に進めていきました。

株式会社クラウドワークスの事例

石山:有難う御座います。それでは、クラウドワークスの中山さん、お願い致します。

中山:宜しくお願い致します。私からは従業員約100人規模の某ベンチャー企業の事例をお伝えさせて頂きます。

ご依頼は同社の広報室長の方から頂きました。ベンチャー企業では良くあるケースなのですが、最初は広報業務だけが担当範囲だったものの、(その方が優秀であるため)それ以外にも様々な業務を任されており、かなりの業務負荷になっていました。そこで、広報業務に専念すべく、得意でないことをすべて外部人材に任せるという意思決定を行いました。

その結果、勿論この取り組みだけによるものではないのですが、本来の業務に専念でき、攻めのPR施策の実行が可能となり、認知度を大きく上げることに成功されました。PR/マーケティング/クリエイティブがうまく噛み合った事例となります。どのような体制で取り組んだのかと言うと、担当者はマーケティングと広報業務を基本的に行い、クリエイティブ制作全般に関しては外部人材に任せるということで役割分担を行いました。

事業の立ち上げ経験がある外部人材の方をアサインしたこともあって、柔軟かつアジャイルに物事を進めることができました。

石山:有難う御座います。こちらも非常に興味深い事例だと思うのですが、新たにベンチャー企業に入社して、その能力を高く評価されている方が、「業務負荷が多いので、仕事を減らして欲しい」と上司の方に率直に言えたことが大きなポイントだと思いました。

中山:もちろん、担当者の方の能力の高さや上司の方との良好な関係性等も前提にはあると思いますが、コア業務とノンコア業務をキチンと考えられていたことが大きいと思います。どういうことかと言うと、戦略策定や空気作りといったアウトプットが言語化しづらい業務については内部で取り組み、アウトプットが明確化しやすい業務を外部人材に任せるというような形で、適切にあるべき形を言語化することが上手く出来ていました。これは外部人材を活用する上ではかなり重要な能力の一つだと思います。言語化ができると、上長の了解も得やすい面もあります。

石山:なるほど。ただ、ノンコア業務と言いつつ、かなり重要な業務もあるじゃないですか?なかなか一筋縄ではいかないと思うのですが。

中山:今回のケースでは、「How」の話はほとんど行わず、なぜやるか/いつまでにやるかだけを明確化して、あとは思い切って全部外部人材に任せてしまうというやり方を取りました。このやり方が奏功したのかもしれません。外部人材の方が抽象的なミッションを理解することに長けていたこともあります。

石山:外部人材の方に「行間」を理解する高い能力があったということでしょうか?

中山:はい。もともと、インハウスデザイナーとして事業の立ち上げを経験されており、絶えず変化する不確実性の高い業務に取り組む中で、そのような能力が身についたのではないかと考えています。

石山:なるほど。一つ思うのは、ハードスキルの有無というのは把握しやすいと思うのですが、今、仰ったような抽象的なミッションを理解するために必要なソフトスキルの有無を把握することはかなり難しいのではないですか?

中山:結論から言うと、めちゃくちゃ難しいです。ただ、難しい中でも、出来ることはいくつかあります。まずは、当たり前ですが、オリエンテーションをとにかく入念にやるということ。あとは、「合意されていない期待」があると、どこかのタイミングで不満が噴出するケースが多いので、それを取り除く作業が重要だと考えています。具体的には、最初の段階で、出来ること/出来ないことを外部人材の方に明確化してもらう作業に取り組んでもらいます。ここで「オーバープレゼンテーション」をしてしまうと、後々、双方が不幸になるケースが多いです。出来ることだけでなく、出来ないことを伝えてもらうことが大切です。そもそも、「完全なマッチング」はこの世に存在しないと思いますが、その中で、出来るだけ納得感のあるアサインに近づけることはできると考えています。

石山:「こんな仕事、全然聞いてないですよ」となってしまうと、なかなかキツイですよね。

中山:そうですね。ミスマッチの可能性を出来る限り減らすことが我々のような会社の役目かと思います。

各社のプロジェクト失敗事例

石山:皆さん、有難う御座いました。すべての事例に共通しているのは、意外にもウェットなスキルが重要であるということだと思います。一方で、どれだけ優秀な人材でも上手くいかずに失敗してしまうプロジェクトも出て来ると思います。以上を踏まえ、ここからは失敗事例について伺っていければと思います。それでは、金栗さん、お願い致します。

INTLOOP株式会社の事例

金栗:外部人材として4名のコンサルタントが入っていたものの、マッチングがうまくいかず、1人交代になり、また1人交代になりということが続いたケースが過去にありました。私自身、常日頃から心掛けていることではあるのですが、クライアント・外部人材・我々の全員がウィン・ウィン・ウィンにならなければ良いプロジェクトにはなり得ません。また、クライアントの期待値を満たすだけでなく、期待値を超えることを求められるケースも多いのですが、その実現が難しく、外部人材の方から自主的にギブアップされたプロジェクトもあります。

石山:有難う御座います。クライアントの期待値を超える上で、秘訣等はあるのでしょうか?

金栗:一概に言えるかどうかはわかりませんが、やはり、「変化力」の高い人材になることが一つの要件としてあると思います。

石山:有難う御座います。では、小林さん、お願い致します。

株式会社コーナーの事例

小林:金栗さんのお話にもありましたが、失敗するパターンとして良くあるのが、期待値のズレだと思います。難しいのは、お客様の期待値がプロジェクトの経過と共に変わっていくケースです。実際、初期の頃とまったく求められるアウトプットの水準が変わっていたりすることもあります。やはり、定期的なディスカッションを通じて、クライアントと成果物のイメージを摺り合わせていくことが大切だと思います。逆に、パフォーマンスが良すぎると、クライアント側としても、「もっとできるんじゃないか」と思うこともあります(笑)あとは、社員の方に自分の仕事を取られたような印象を持たれてしまって、人間関係のもつれが発生する場合もあります。

石山:その場合、どのような方法で対処していくものなのでしょうか?

小林:綿密な擦り合わせを心掛けることだと思います。どうしても、外部コンサルの立場では、決裁者や上長の方ばかりとコミュニケーションを取りがちなのですが、そうなると、現場の方から不満が生まれがちです。現場の方々が何を考えているかを常に意識してプロジェクトに取り組む必要があると考えています。

石山:有難う御座います。中山さん、いかがでしょうか?

株式会社クラウドワークスの事例

中山:先程、小林さんが仰ったような関係性に基づくトラブルはあります。プロジェクト終了後、その満足度が低いというケースがあったのですが、その時は「合意されていない期待」が生まれ、積み重なってしまったことが理由と考えています。

石山:有難う御座います。やはり、外部と内部が協働(コラボ)して働くことが一番のポイントであって、良好な関係性を構築できない限りは、なかなか上手くいかないですよね。

中山:そうですね。表面上と実態のギャップの存在を認識することが遅れてしまったことが原因であると認識しています。

石山:結局のところ、社内外問わず、いかに円滑なコミュニケーションを実現する仕組みが整えられているかに尽きるのかなと思います。また、それが出来ていれば、急速な変化に対して対応することも難しくないのではないでしょうか。皆さん、本日は有難う御座いました。

執筆者:勝木健太
1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業企画/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。執筆協力として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』などがある。