「B2B SaaSエンジニアが語るマネジメント論」米元 智氏×郷田 祥史氏×渋谷 亮氏×戸本 裕太郎氏×曽根田 侑也氏×堀 譲治氏

B2B SaaS開発におけるモチベーションマネジメント(曽根田 侑也氏)

登壇資料:B2B SaaS開発におけるモチベーションマネジメント

曽根田:こんにちは、A1A株式会社の曽根田と申します。本日は、「B2B SaaS開発におけるモチベーションマネジメント」というタイトルでお話させて頂ければと思います。

まずは簡単に自己紹介をさせて頂きます。私は新卒で営業を一年半やっていまして、その後、婚活アプリ/旅行系アプリ/漫画系アプリの開発に取り組んでいました。 A1A株式会社には今年の2月に入社しまして、エンジニアをやっています。

好きな漫画は「GIANT KILLING」です。「GIANT KILLINGの楽しみ方」という資料を作成したので、機会があれば、ご覧頂ければと思います。

A1A株式会社について簡単にご紹介させて頂きます。2018年6月26日に設立した会社です。設立して一年半くらいのベンチャー企業です。社名の由来ですが、「B2Bをワンランク上に」というミッションを掲げており、結果、会社名がこのような名称になりました。

現在は、ビジネスサイドが8名/エンジニアが7名の合計15名で事業に取り組んでいます。提供しているサービスは「RFQクラウド」という名前でして、2019年10月2日にリリースしました。サービスについて凄く簡単に説明すると、製造業には調達購買というプロセスがあるのですが、その調達購買に対するソリューションを提供しているプロダクトです。より具体的には、購買調達の中でも、「見積査定」という業務があるのですが、これがなかなかアナログな業務でして、そこにデジタルを取り入れて、購買担当者にもっと楽になってもらうことを目指しています。

本題に入る前に、皆さんにお聞きします。 B2C領域のアプリって、パッとどれぐらい想像できるでしょうか。多分、たくさん頭に浮かびますよね。内容が分かりやすくて、とっつきやすくて、クリエイティブなイメージがある。自分も最初はそうでした。

それに対して、B2B SaaSのプロダクトですが、正直に言って、私自身、Smart HR/ジョブカン/マネーフォワード/freeeくらいしか知りませんでした。

ちなみに、B2B SaaSには二種類ありまして、「Vertical SaaS」と「Horizontal SaaS」があります。Horizontal SaaSというのは、会計/人事/採用など、どの企業にも存在するような機能に対するソリューションを提供しているSaaSのことを指します。一方、Vertical SaaSというのは、業界に特化したSaaSのことを指します。例えば、弊社であれば、製造業に特化したSaaSですし、KAMINASHIさんであれば、食品業界に特化したSaaSです。

ここからが本題なのですが、B2B SaaS開発のイメージって、B2Cに比べると、「クリエイティブじゃないよね」「自社開発というかむしろ受託開発に近そう」「技術的チャレンジの機会が少なそう」といったネガティブなイメージを持たれがちだなと思います。何を隠そう、私自身、そう思っていました。

今回の目的としては、この発表を聞いてもらって、「B2B SaaS開発ってイノベーティブだよね」「ユーザー思考がめちゃくちゃ必要とされるよね」と思って頂ければ、本当に嬉しいです。

それでは、本日のアジェンダです。「Vertical B2B SaaS開発の難しさ」「弊社での技術的チャレンジについて」「まとめ」の順にお話させて頂きます。

まず、「Vertical B2B SaaS開発の難しさ」についてです。弊社でも、新しく入社した方にお話を聞くと、「そもそも何をつくっているかわかりにくい」と言われることが発生します。なぜそのような問題が発生するのかと言うと、弊社の場合、製造業の調達購買に対する情報収集が難しいという点があります。また、様々な企業から多様な要望がやって来るため、どれが正しいのかがわかりにくい。さらに、企業向けのシステムであり、個人向けのフリーミアムなアプリではないため、仮説検証を行うことも難しい。

これらを一つずつ説明していきます。まず、情報収集が難しい理由についてですが、「身近に参考になるアプリケーションが少ない」「実業務とあまりにもかけ離れている」「業務内容が複雑であり、専門用語が多い」が挙げられます。実際、Horizontal SaaSのプロダクトと比べて、「実業務として身近に感じられない」という側面は確かにあります。例えば、Smart HRさんであれば、年末に利用する機会もあるでしょうし、なんとなく想像がつきます。一方、弊社のような製造業の見積査定システムについては、なかなか想像がつきにくい部分があります。また、業務内容が複雑で専門用語が多いことも特徴として挙げられます。

これらの課題に対して、どのようにして解決していったのかというと、まず、実際に展示会に参加してみました。

あとは、営業に同行していました。さらに、弊社にはドメインエキスパートとして真壁さんという方が在籍しているのですが、真壁さんと積極的に飲みに行ったりして、普段から質問できる環境を作っていきました。

弊社では、時々、全社員を巻き込む形で、真壁さんが社内向けに勉強会を開催して、見積査定のロープレをしてくれます。普段は優しいんですが、勉強会ではビシバシと教えて頂いています。

また、企業からの要望が多様な理由ですが、営業の人間から話を聞く限りでは、そもそも顧客自身が課題を認識できていないこともあって、そのため、色々な要望が出てきてしまうという側面があります。特に、製造業の場合は、企業によって業務内容がバラバラで、なかなか大変です。あとは、顧客自身が現在の業務フローが絶対に正しいと思っているケースが多いです。

これらの課題を解決するために何をやるかというと、「本当に解決したい課題とは何か」ということを追求します。あとは、「要求」自体は違うのですが、共通する部分もあるので、それらを「一般化」していくことを心掛けます。また、業界別に共通項がある場合は、グルーピングして、別機能として提供します。さらに、お客さんが「絶対に正しい」と思っている業務フローを見直すために、デザイナーさんを巻き込んでUXを設計していくことも大切です。

こちらは、AsIs/ToBeシートと呼ばれるものでして、簡単に言えば、営業担当が営業活動をした際に、お客さんの現状を細かく記載するシートです。お客さんの要望をヒアリングしつつ、このシートを活用しながら、「こうなるのが理想だよね」ということをお客さんと合意を取って、「じゃあ、 RFQクラウドでどうやって解決しましょうか」という形で解決していきます。

こんな感じで、ストーリーマッピングを作ってみて、デザイナー/PM/エンジニア/営業/ドメインエキスパートを含め、全員で議論していきます。

3番目の「解説検証が難しい」という点ですが、最初に軽く話しましたが、フリーミアムなプロダクトが少ないので、自分で触って試すことができません。また、企業業務に深く関わっているので、 B2Cの製品のようにどんどんアップデートして、ABテストを行うことも難しい。さらに、プロダクトの最初の設計のミスが将来の大きな「負債」になる可能性がある。

これらを解決するために何に取り組んでいるかと言うと、これは弊社の代表の松原が書いたブログにも記載されていますが、最初はプロダクトがないので、何をやったかと言うと、購買担当の方に徹底的にヒアリングを行い、モックと営業資料をつくる。その上で、松原が営業に行って、お客さんとやり取りする中で、「これは違うよね」「ここはもっとこうしてほしい」ということを繰り返して、実際に画面のイメージを見てもらって、それを展示会や営業の場所で繰り返して、やっと10月2日にリリースした形です。

また、弊社では、デザイナーの佐藤さんが非常にこだわってくれているのですが、「デュアルトラックアジャイル」 のカスタマイズ版を活用しています。このフローを回すのが良いプロダクトへの道のりだということで、凄くこだわってやっています。内容について、ざっくり言うと、情報を集めて、分類して、きちんと課題を抽出して、優先度を決めて、開発に入って、テストを回してというようにして、キチンとPDCAを回していきましょうということですね。

最後ですが、弊社の「技術的なチャレンジ」についてご紹介させて頂きます。上から順に、「共通コンポーネントの独自実装」「高度なデータモデリングとスキーム設定」「マイクロサービス・ビッグデータ」です。

まず、フォームライブラリーの独自開発ですが、このフォームはJSONをもとにして作られています。このフォームがなぜ必要なのかと言うと、見積の明細って会社ごとにバラバラなので、ここだけはこだわって、「カスタマイズできるようにした方がいいよね」ということでつくりました。元々、Mozillaがつくっていた「react JSON schema」というライブラリを利用していたのですが、「今後のことを考えると、拡張しにくいよね」ということで、21歳の若手のフロントエンジニアが作ってくれたライブラリです。「そのうち、OSSにしたい」と言っていたので、楽しみにしていてください。

「高度なデータモデリングとスキーマ設定」についてですが、左が弊社のCTOの佐々木の資料で、右が弊社のフロントエンジニアの資料です。気になる方は是非見て頂けると幸いです。

未来の話ですが、弊社のサービスは「多言語対応」していく必要があると思っています。また、現在は、「RFQクラウド」という見積査定に特化したサービスになっていますが、その前後のサービスについても、「プロダクトとして押さえていきたい」と考えていますので、どんどんマイクロサービス化していきたいという話をCTOとしています。

また、データがどんどん溜まっていくので、それを利用して、何か分析できるようなツールを作りたいということは考えています。それは技術的には非常にチャレンジだなと思っています。最後にまとめになりますが、複雑なユーザー組織のミッション・ドメインを正確に理解することが大事だなと感じています。その上で、風呂敷を最大限に広げて、ミニマムな設計と実装で作っていく。「ちょっと間違っていた場合でも、簡単にやり直せるような設計をしていきましょう」ということですね。あとは、ドメインを深く理解することで、未来を描いた技術的チャレンジも広がっていくのではないかと考えています。

どうでしょうか。B2B SaaS開発のイメージが湧いたでしょうか。このようなことを意識することで、B2B SaaS開発へのモチベーションを維持できるのではないかなと考えています。この発表を聞いて、B2B SaaS開発に対して、ポジティブな感情を持って頂ければ、今回の発表は自分にとっては大成功です。ご清聴ありがとうございました。