「経済的な理由で挑戦を断念する若年層を支えたい」奨学金の提供・返済支援プラットフォーム『Crono』代表取締役 高 瀛龍氏に聞く

近年、大学等に進学するにあたって、奨学金を利用する学生が増加傾向にある。独立行政法人 日本学生支援機構によれば、大学・専門学校に通う学生の半数以上が貸与型奨学金を受給しており、国立・私立大学ともに授業料が高止まる中、進学に向けた資金を拠出するための有効な手段の一つとなっている。その一方で、奨学金の「返済苦」を原因とする自己破産者の数は、過去5年間で15,000人に達するとも言われており、大きな社会問題として捉える向きもある。

そうした状況を踏まえ、若年層の挑戦を企業や社会が支える『企業奨学金』をコンセプトとして掲げ、奨学金の提供・返済支援プラットフォームを展開するのが「Cronoだ。本稿では、同社の事業内容に加え、サービス立ち上げの経緯や今後の展望について、創業者/代表取締役の高 瀛龍(コウ インロン)氏に話を聞いた。

出典:crono 公式サイト

写真撮影:Kanako Okada

奨学金に関する2つのサービスを展開

ー 本日は宜しくお願い致します。まず、「Crono」の事業内容について教えて頂けますか?

高:宜しくお願い致します。弊社は、「若者の挑戦を企業と社会が支援する仕組みへ」をビジョンとして、2018年7月に創業されたスタートアップ企業です。2019年12月現在においては、「My奨学金リスト」「crono Job」という2つのサービスを展開しています。

「My奨学金リスト」は、世の中に存在する奨学金(大学/地方自治体/財団)の中から、各人の状況にマッチした奨学金を抽出の上、提示するサービスです。奨学金の申込時期が近づくと、必要に応じて、登録者に対して、アラートが送られる仕組みとなっています。

出典:My奨学金リスト

「crono Job」は、貸与型奨学金を借りている学生/社会人に対して、企業が奨学金の肩代わりを行ってくれるサービスです。肩代わりの方法としては、「入社後に一括で肩代わり」「勤続に応じて肩代わり」の2種類があります。登録対象者は、貸与型の奨学金や民間教育ローンを利用する学生/社会人の方々で、2019年度中に1,000人の登録を目指しています。

出典:crono Job

さらに、上記の2つのサービスに加えて、2020年3月には、新サービス「crono企業奨学金プラットフォーム」をリリースする予定です。

アクセンチュア在籍時に独学でプログラミングを習得

ー 有難う御座います。ご自身で「Crono」を開発されたと伺ったのですが、元々はアクセンチュアにいらっしゃったのですよね?

高:はい。新卒で、アクセンチュア株式会社 戦略コンサルティング本部に入社しました。大手企業の事業戦略策定等に関与する同社での業務内容に対して「やりがい」を感じながら日々働いていましたが、「もっとゼロイチのフェーズから、事業の立ち上げに取り組んでみたい」という気持ちが徐々に強くなり、いつしか起業を志すようになりました。

ー ということは、プログラミングはアクセンチュア在籍時に習得されたのですか?

高:そうですね。当時は、コンサルタントとしての日々の業務を終えた後、プログラミングの学習に取り組んでいました。具体的には、平日であれば、業務終了後の夜22時以降から学習をスタート。土日であれば、一日中、「プログラミング漬け」という感じです。

ー 多忙を極める中で、勉強時間を確保されていたのですね。プログラミングスクールには通っていたのですか?

高:私の場合、プログラミングスクールには通っておらず、「Progate」や「ドットインストール」等の教材を利用し、独学でプログラミングを習得しました。最初の頃は、なかなかエラーを解決できず、“発狂”しそうになりましたが、「とにかく自分の力でサービスをつくれるようになりたい」という強い気持ちで、一つひとつ、課題を潰し込んでいきました。

受託開発/CAMPFIREを経て、Cronoを創業

ー 素晴らしいですね。その後、Cronoを立ち上げたのですか?

高:アクセンチュア退職後、「まずはとにかく生計を立てなければ」ということで、システム開発の受託事業を開始しました。具体的には、企業向けに1社あたり100〜200万円でパッケージ製品の導入や受託開発をしていました。何社かの企業様から案件を頂くうちに、「なんとか生きていけるのではないか」と手応えを掴んでいきました。

その後、CAMPFIREに入社し、(Cronoの現在の取締役でもある)家入一真さんと出会ったことをきっかけに、本格的にサービスを立ち上げることになりました。

奨学金の返済で留学を断念せざるを得なかった大学時代

ー 「Crono」のアイデア自体はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

高:私自身、大学時代に海外留学を目指したことがあったのですが、結局、経済的な事情で断念せざるを得なかった過去があります。これがある種の「原体験」となって、「金銭的な理由で、若い人たちが挑戦を断念せざるを得ない状況を変えたい」と考えるようになりました。そして、その後、いくつかの事業アイデアを検討した結果、「Crono」のアイデアにたどり着きました。言うまでもなく、将来の日本を支えるのは、志のある若い人達です。そういった方々に対して、挑戦するための資金が満足に行き渡っていない現在の状況は、我が国の将来的な競争力を考える上でも、非常に深刻な課題の一つになりえるのではないかと考え、Cronoの創業を決意しました。

若い頃の「自己投資」が人生をレバレッジさせる

ー 奨学金返済の負担が大きいと、社会人になってからの「学び」の機会も限られてしまいますよね。

高:そうですね。私自身、貸与型奨学金を約800万円借りていまして、毎月6万円、奨学金を返済していたのですが、生活は文字通り「カツカツ」の状態で、社会人になってからも、なかなか満足に貯金ができない状況が続きました。「人生100年時代」においては、「学び続ける」ことが何よりも重要で、いわゆる「自己投資」も若い頃に取り組んだ方が圧倒的にレバレッジが効くことが多い。その意味で、奨学金の返済が足かせとなって、若い頃に人生のチャレンジに踏み出せないなんて絶対におかしいし、あまりにも勿体無い。私としては、「Crono」を通じて、このような「社会的損失」を解消していきたいと考えています。

ー 最後に、今後の展望を教えて頂けますか?

高:今後は、学生や若手社会人の方々を支援すべく、「Crono Job」の登録企業/ユーザー数の拡大を目指して参ります。さらに、2020年3月からは、企業から奨学金を提供するサービス「Crono」を開始する予定です。これらの取り組みを通じて、「生まれた環境に関係なく、誰もが挑戦できる」そんな社会をつくって行きたいと考えています。

執筆者:勝木健太

1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。執筆協力として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』などがある。