2022年3月4日、企業等におけるがん検診の受診率向上等を目指す「がん対策推進企業アクション」が令和3年度における活動の統括セミナーを開催した。開会挨拶では、がん対策推進企業アクション事務局の事務局⾧である山田浩章氏が「がん対策推進企業アクション13年の歩み」について講演。その後、推進パートナー約3,500企業・団体の中から、今年度においてがん対策に積極的に取り組んだ企業・団体5社が発表され、アフラック生命保険株式会社が「厚生労働大臣表彰 最優秀賞」を受賞した。
各社の主な取り組みは次の通り。
目次
がん対策推進パートナー賞「検診部門」
サントリーホールディングス株式会社
- 肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんに加えて前立腺がんについても定期検査の必須項目に
- 従業員セミナーを動画でいつでも見られる状態にするなど、検診の重要性を啓発
- 婦人科専門の相談窓口を設置
- 「がん治療と就労の両立支援ハンドブック」を作成
がん対策推進パートナー賞「治療と仕事の両立部門」
日本電気株式会社
- 治療と仕事の両立支援に向けて休業できる制度を設け、傷病手当の対象とする
- スーパーフレックス制度で、時間に縛られない働き方ができる
- 体調に応じて、短時間勤務・短日勤務などが選択できる
- 産業医と面談できる制度を設けている
がん対策推進パートナー賞「情報提供部門」
ブラザー工業株式会社
- 「がん予防スタンプラリー」という仕組みを構築
- 社内イントラにがんに関する教育資料を掲示し、資料のQRコードを読み取るとアプリにスタンプがたまることで楽しみながらがん教育を推進
- 部署ごとに健康教室を実施したり、専門医によるがんセミナーを実施
- 「がんサバイバートーク」というイベントを開催
がん対策推進パートナー賞「中小企業部門」
日本ナレッジスペース株式会社
- 「健康経営優良法人」の認定を受け、代表取締役が自ら「健康経営エキスパートアドバイザー」の資格を取得
- 検診の100%実施と1年に1回がんに対するリスク評価を実施
- リスクが高い場合は全国の医療機関でがんドックを受診できる仕組みを取り入れ、ドックを受けやすいよう特別休暇も設けている
- 入院治療が必要な場合は入院費用を補助
- 食事への意識改革として、専門家によるセミナーを実施
- 現状の食事と理想の食事を比較、補完としてサプリメントを社員に支給する制度を構築
「厚生労働大臣表彰 最優秀賞」
アフラック生命保険株式会社
- 「がん・傷病就労支援プログラム」を「相談」「両立」「予防」の3つを柱に設定
- 「相談」では、「All Ribbons」というがんを経験した社員のコミュニティをつくり、ディスカッションや対話型のイベントを行う
- 「両立」は、啓発による職場環境づくりをするため、ハンドブックや研修によりがん就労支援の必要性を理解し、職場での環境づくりに役立てている
- 「予防」では、がん検診受診100%を目指して、e-ラーニングなどで啓発している
授賞式の後は「我が国におけるがん対策について」と題した厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課 課長・中谷祐貴子氏による講演が行われ、がん対策推進基本計画に関する説明とがん患者・経験者の両立支援と就労支援を円滑に進めるためには企業の環境整備が重要であるとの議論がなされた。また、「700社アンケートで明らかになった、受診率に効く12の取り組み」について株式会社キャンサースキャン代表取締役社長・福吉 潤氏から従業員のがん検診の受診状況の把握と受診への声がけの重要性が指摘された。さらに、東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座の特任教授・中川恵一氏の講演では、「進化する企業アクションとコロナで減る”がん患者”」と題して、これまでのがん対策推進企業アクションの歩みや新型コロナウイルス感染拡大の影響による検診控えにより、現在、見せかけ上、がん患者が減っているとの問題提起がなされた。
セミナーを通して伝えられたメッセージは、「がんについて会社全体で学び、正しく知る」「早期発見のためがん検診の受診率を上げる」「がんになっても働き続けられる環境を作る」の3つ。長寿国となった日本で働くビジネスパーソンにとって、企業におけるがん検診の受診率向上は必須であり、職域がん対策は重要な経営課題の一つであることがあらためて浮き彫りになった。