「自分で選んだ」「自分で考えた」という顧客体験を提供する

昔、購入した書籍で『買う理由は雰囲気が9割(あさ出版)』という本がありまして、先日、たまたま読み直す機会がありました。

本書は、インフルエンサーマーケティングについて書かれたビジネス書なのですが、マーケティング全般に役立つような示唆的なメッセージも多数盛り込まれており、一般的なビジネスパーソンにとっても、参考となる箇所は非常に多いように思われます。その中で、今回は、「Chapter 2:消費者が欲しがっているのは『イケてる自分』」の章内の「03:人は自分で選びたい」を踏まえつつ、個人的に感じたことをいくつか共有させて頂きます。

人は自分で選びたい

本節においては、人間は「自分自身で選び取った」という満足感を持って、商品を購入するという主張が展開されています。具体例として、婚活パーティーの事例が取り上げられていますが、筆者曰く、婚活パーティの参加者としては、「いい人がいれば紹介して欲しい」とは考えているものの、年齢、年収、容姿などが希望通りの相手をエージェント側にお膳立てされると、驚くべきことに、「押し付け」られているように感じるそうなのです。こういった事例を踏まえ、消費者が「自分で選んだ」と納得できるような状況を設計することが理想的なのだと筆者は説きます。確かに、婚活以外でも、ほとんどの人々は自分のキャリアを主体的に選びたいと考えるでしょうし、これは個人的な感覚としても十分に理解できます。ただ、一方で、人間は出来るだけ「考えたくない」生き物であるというのも事実。なので、最初から最後まで自分で考えるのは辛い。だけど、ある程度、選択肢を絞ってもらった上で、いくつかの選択肢の中から「自分で選び取った感」が欲しいというのが顧客の本質的な欲求なのかなと感じます。

一流のコンサルタントは顧客自身に答えを発見してもらう

本書が主張する「人は自分で選びたい」を見た際に、アナロジー的な意味合いで脳裏をよぎったのが、DeNAの共同創業者であり、現在はエンジェル投資家として活動されている川田尚吾氏の過去のツイッター投稿です。川田氏(というか、学生時代の川田氏が対面したコンサルティングファームの面接官)は、クライアントに答えを提供するのではなく、ソリューションスペースを提供してクライアント自身に答えを発見してもらうのが一流のコンサルタントであると主張します。

これは個人的にも非常に理解できる話で、クライアントの担当者に対して、「自分で考えた」「自分で思いついた」という体験を提供することで、担当者自身にモチベーション高くプロジェクトに取り組んでもらうことが目的であり、上述の「人は自分で選びたい」と通じる話です。また、少し蛇足になりますが、クライアント向けの提案書で良くあるパターンで、松・竹・梅の3パターンを選択肢として提示した上で、クライアントに最終的な意思決定を行って頂くケースがありますが、これも要するに、顧客に対して、最終的に「自分で考えた」「自分で選んだ」という体験を設計していると捉えることもできるかと思います。この辺りについては、また別途、どこかのタイミングで整理させて頂ければと思います。

執筆者:勝木健太

1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。執筆協力実績として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』、寄稿実績として、『キャリアハック』『Forbes JAPAN』『ダイヤモンド・オンライン』『BUSINESS INSIDER JAPAN』『ITmedia』等がある。Facebookアカウントはこちら / Twitterアカウントはこちら

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